大規模修繕工事の実施には季節が重要!?季節ごとに違うメリット・デメリットを解説

大規模修繕工事を行う際には、修繕費用や施工会社選び、住民・近隣への配慮などあらゆる面で気を配らなければなりませんが、併せて気を配っておきたいのが大規模修繕工事を実施する『季節』です。

管理組合の中には「修繕工事のタイミングなんて季節関係なくいつでもいいだろう」と考えている方もいらっしゃるかと思いますが、スムーズに安全な修繕工事を行うためには“台風が多い季節”や“梅雨時期は避けた方が良い”というように、季節によってそれぞれメリット・デメリットがあります。

その違いをしっかりと理解しておくことでトラブルを未然に防ぐことができるだけでなく、コスト削減にも繋げることができますので、今回は大規模修繕工事に適した季節とそれぞれの季節で生じるメリット・デメリットについて解説していきます。

「春」の季節に行う大規模修繕工事のメリット・デメリット

マンションの修繕業界には「春工事」という言葉があるほど、春は大規模修繕工事に向いている季節です。

実施時期は2月頃から6月頃までで、過ごしやすく温暖な気候である春は下地補修や塗装、タイル張り替えといった湿式工事を行いやすく、施工品質を確保しやすいというメリットがあります。

一方で、大規模修繕工事のニーズが高い人気な季節であるため依頼がしにくかったり、コストが高くなりがちな季節でもあります。

<メリット>
・過酷な気温を避けられるので効率的な大規模修繕工事が行える
・下地補修や塗装、タイル張り替えなどの湿式工事がしやすく工事がスムーズに進む
<デメリット>
・春の大規模修繕工事は人気が高いため、依頼がしにくくコストが高くなりやすい
・直前での依頼は難しいため、早めに計画を立てておく必要がある

「夏」の季節に行う大規模修繕工事のメリット・デメリット

夏は晴れの日が多く塗料が乾きやすいため、工事が予定通りスムーズに進みやすいというメリットがあります。

しかし、台風やゲリラ豪雨が発生しやすい季節でもありますので、気候の変化によって大幅な工期延長が発生すれば余計にコストがかかってしまうこともあるため注意が必要です。

また外壁塗装を行う際には塗料の飛散を防ぐために部屋の窓を開けられなかったり、防水工事の際にエアコンが使えないという状況があるため、住民の方々からの支持も得にくい季節ともいえます。

ただし、施工会社によっては初期の工事費が値引きされることもあるなど、相場よりも安い価格で大規模修繕工事を実施できる可能性もあります。

<メリット>
・塗料が乾きやすいため工事が予定通り進みやすい
・初期の工事費が値引きされることもあり、相場よりも安く大規模修繕工事を実施できる
<デメリット>
・台風やゲリラ豪雨が発生しやすい季節なので、大幅な工期延長で余計なコストがかかる可能性がある
・猛暑が続く季節に「窓が開けられない」「エアコンが使えない」といった事から住民の支持が得にくい

「秋」の季節に行う大規模修繕工事のメリット・デメリット

春に並び、この季節は修繕工事のニーズが高く「秋工事」とも呼ばれています。

過ごしやすい穏やかな気候で大規模修繕工事を行うことができるため、住民の負担も少なくなり、品質の確保にも向いている季節といえます。

また、外壁塗装工事中は足場が設置されているためどうしても窓から不審者が侵入しやすい状況になりますが、お盆や年末などの長期休暇を避けることでセキュリティ面でも安心です。

一方で夏の終わりから秋の始めにくる台風や長引く秋雨などの影響から、工期延長や工事費用の追加請求が発生することもあるので注意が必要です。
また春の季節同様に人気シーズンでもあるため、依頼を断られたり工事費が引き上がったりするケースもあります。

<メリット>
・過酷な気温を避けられるので効率的な大規模修繕工事が行える
・下地補修や塗装、タイル張り替えなどの湿式工事がしやすく工事がスムーズに進む
・過ごしやすい気候であるため住民への負担が少なく工事を実施できる
<デメリット>
・台風や秋雨の影響から工期延長や工事費用の追加請求が発生する可能性もある
・人気な季節ゆえ人材不足で依頼を断られたり、工事費が割り増しになりやすい
・直前での依頼は難しいため、早めに計画を立てておく必要がある

「冬」の季節に行う大規模修繕工事のメリット・デメリット

気温が低くなる冬の季節というのは、結論、大規模修繕工事には向いていません。

下地補修や塗装、タイル張り替えといった湿式工事で使用する塗料は、気温が5度以下になると硬化しにくく、さらに凍害による品質の劣化が引き起こる危険性もあるためです。

添加剤を使用したり工法を工夫したりと、冬の季節でも工事を進めることはできますが、日照時間が短く塗装作業を行う時間が限られるため工期延長が発生すれば、工事費用が余計にかかってしまう恐れもあります。

また、品質管理が難しい寒冷地ではケアレスミスで低品質になる可能性が高く、雪が降れば塗装工事がストップしてしまうデメリットもありますが、条件次第では工期や費用はかからずに修繕工事ができることもあります。

<メリット>
・大規模修繕工事を依頼しやすい
・条件が合えば工期や費用をかけずに修繕工事を実施できる
<デメリット>
・気温が5度以下になると塗料が硬化しにくく作業が進まない(ただし、添加剤で調整可能)
・凍害による品質の劣化が引き起こる危険性もある
・品質管理が難しい寒冷地ではケアレスミスで低品質になる可能性が高い
・雪が積もりやすい地域では雪解けまで塗装工事がストップしてしまう

大規模修繕工事は季節ごとのメリット・デメリットを押さえ、計画的に実施しよう!

大規模修繕工事を行う際には、それぞれ季節ごとに異なるメリット・デメリットを押さえて計画的に実行することが大切です。

「春」と「秋」は気温や天候が落ち着いていて工事がスムーズに進みやすいためおすすめの季節と言えますが、人気シーズンゆえ前もって依頼しておかないと工事を断られるケースや、費用が高くなりやすいといった点にも考慮が必要です。
しかし夏や冬、いずれの季節であっても気象状況次第では予定通りに工事を進められない可能性も存在します。

そして費用面や施工面、住民の方々への配慮など何を重視するのかによって大規模修繕工事のベストシーズンは変わってくるので、マンションの状況に合わせて早めに計画を立て、修繕の方針をしっかりと決めておきましょう。