今まで大規模修繕工事を行う周期は約12年に一度とされてきましたが、
現在ではその建物に適した周期として15年~18年に一度行うところも増えてきています。
実は国土交通省が定めているガイドラインがこの周期を定める上での参考となっているのですがご存じだったでしょうか。
工事の周期以外にも大規模修繕工事にあけるさまざまな内容がガイドラインでは定義されています。
そこで今回は国土交通省のガイドラインで定められている大規模修繕工事における内容や
直近2021年に改定された内容について解説していきます。
目次
国土交通省が定める大規模修繕工事のガイドラインとは
国土交通省では日本の法律である建築基準法をもとにして建物の建て替えや改修におけるガイドラインを公表しています。
このガイドラインは現状の法律やデータを踏まえたさまざまな視点から情報提供を行った内容となっており、大規模修繕工事を予定している管理組合にとってとても有効なものとなっています。
そのガイドラインの中で国土交通省は大規模修繕工事における改修、改良、修繕を以下のように定義しています。
・改修
改良及び修繕によって建物の性能を改善・工場する変更工事
・改良
建物各所の性能・機能の向上
例)材料や設備を新しいものに取り換える、新しい性能や機能を付けくわえるなど
・修繕
材料や設備の劣化している部分の修理・取替を行って建物や劣化した部分を実用上支障ない状態まで回復する
上記の定義をもとにして大規模修繕工事を行っていく必要があります。
国土交通省のガイドラインで「大規模修繕工事」はどのように定義されている?
国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕工事について以下のように定義されています。
マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。
引用元:国土交通省
建物の経年劣化は必ず起こるものという考えを前提としたもので、時間が経過したとしてもその建物の資産価値を保つことや快適な環境を維持するうえでも
この大規模修繕工事は必要不可欠なものと言えます。
国土交通省が定義している大規模修繕工事のガイドラインの主な内容
大規模修繕工事における計画作成の基本的な考え方
国土交通省のガイドラインでは大規模修繕工事を行うにあたって作られる工事計画の基本的な考え方が記されています。
まず、以下の計画の作成における3つの目的を念頭に置くことが必要です。
- 今後見込まれる大規模修繕工事の内容やおおよその時期、さらには概算の費用などを明確にする
- 大規模修繕工事の実施のために積み立てておくべき修繕積立金の金額とその根拠を明確化する
- 大規模修繕工事を円滑に行うために予め長期計画について合意をする
上記を軸として大規模修繕工事の計画を確実なものにするための考え方が記されています。
大規模修繕工事における計画作成の方法
計画作成の基本的な考え方をもとにして以下のような計画の構成から工事費の算定までの方法が記されています。
- 大規模修繕工事の計画の構成
- 大規模修繕工事の計画標準様式の利用
- 建物や設備の概要
- 大規模修繕工事の計画期間の設定
- 推定される大規模修繕工事の費用算定
滞りの無い工事を行うためにもこれらの説明をもとにして大規模修繕工事の計画を作成していく必要があります。
大規模修繕工事における修繕積立金の金額設定の方法
大規模修繕工事を滞りなく行うために必要不可欠な修繕積立金の設定方法が記されています。
大規模修繕工事の直前に予算不足が発覚して住人から臨時徴収金を集める必要が出てくる可能性もあるのでそれを避けるためにもこの国土交通省のガイドラインを参考にして計画的に主膳積立金を収集する必要があります。
直前で臨時徴収金を集めることは住人とのトラブルにつながる可能性もあるのでできるだけ避けるようにしましょう。
2021年に改定された国土交通省のガイドライン内容とは
国土交通省が定める大規模週修繕工事のガイドラインは2021年にいくつか改定となりました。
以下の3つの内容は工事においてかなり重要な項目となっているのでしっかりと把握しておきましょう。
ガイドラインの改定内容 ① 建物の長期修繕計画期間の統一
今までの国土交通省が定める大規模修繕工事のガイドラインでは、既存の建物の計画期間は25年、新たに建てられた建物の計画期間は30年と記されていましたが、
2021年の改定によってどちらの建物も計画期間が30年に統一されました。
改定後、大規模修繕工事が30年以上の計画期間内で2回含まれる場合とします。
ガイドラインの改定内容 ② 大規模修繕工事の周期の目安に幅を持たせた
今までの国土交通省が定める大規模修繕工事のガイドラインでは例えば外装の塗装の塗り替えを12年に1回としていましたが、改定後は12年~15年に1回と幅を持たせることになりました。
建物によって工事が必要となる周期が異なる為、それぞれの建物に合わせた周期に設定できるようになりました。
ガイドラインの改定内容 ③ 省エネ性能向上のための大規模修繕工事の有効性を記載
今までの国土交通省が定める大規模修繕工事のガイドラインでは省エネ機能の向上を目的とした記載がありませんでしたが、2021年の改定によって省エネ機能の向上を目的とした工事がいかに有効かという記載が追記されました。
また、これに合わせてエレベーター点検にあたって策定されていた指針に関しても追記されました。
ガイドラインの改定内容 ④ 修繕積立金の1m²あたりの単価を更新
修繕積立金の単価に関しても今までの事例を踏まえたうえで更新されました。
国土交通省のガイドラインでは月額の専有面積当たりの修繕積立金の金額が明記されています。
ガイドラインの改定内容 ⑤ 修繕積立金の目安となる計算式の見直し
今までの国土交通省が定める大規模修繕工事のガイドラインでは既存の建物が含まれていませんでしたが、2021年の改定によって既存の建物も長期修繕計画を見直すことが想定されて新たに作成されました。
改定された国土交通省のガイドラインを自身の大規模修繕工事の参考にしよう
今回解説した国土交通省が定めるガイドラインを参考にすれば問題なく大規模修繕工事の計画から実施、竣工まで滞りなく行うことができます。
2021年に新たに改定された項目は特にしっかりと確認し、その建物に適した大規模修繕工事を行いましょう。