マンション大規模修繕で利用できる助成金と補助金制度を紹介

12~15年周期で行われるマンションの大規模修繕工事ですが、それには莫大な費用がかかるもの。

また長期修繕計画をもとに必要資金を住民から積み立てているのにもかかわらず、直前になって予算不足が発覚するマンションが多く、管理組合を悩ませるケースがあとを絶ちません。

そんな予算不足に陥った際に役立てたいのが『助成金・補助金制度』です。これはマンションの大規模修繕工事において、国や自治体から助成金や補助金といった支援が受けられる制度になります。

そこで今回はマンション大規模修繕で利用できる助成金や補助金について、種類や制度まで解説いたします。

マンションの大規模修繕で起こりやすい“予算不足問題”その原因とは?

マンションの大規模修繕工事では、修繕に必要な金額だけ住民から修繕積立金を徴収していますが、予算不足が発生することがあります。その原因は主に以下の3つです。

原因①滞納者の増加で予定通り徴収できない

経済の不況や高齢者の増加による滞納者や空き部屋がある場合、予定通りに徴収できなくなってしまう。

最近ではマンション住民の“2人に1人は60歳以上”と言われるほどマンションの高齢化が深刻な問題となっており、古いマンションほど年金受給者が増え、修繕積立金の値上がりに敏感になるのです。

原因②修繕積立金の設定金額が低すぎる

マンション販売会社の販売優先策によって初期に設定した修繕積立金の設定金額が低いまま改正していないケースがよくみられます。

本来であればどこかのタイミングで値上げをしたり、住民から一時金徴収をしておくべきですが、疎かになっていると修繕積立金の予算不足に陥ってしまうのです。

今一度、長期修繕計画に基づいた修繕積立金の設定金額を見直しましょう。

原因③金額のかかる修繕工事が増える

築25~30年の2回目以降の大規模修繕工事では、外壁塗装や防水工事意外に、エレベーター工事や機械式駐車場の工事など、金額のかかる修繕工事が必要になってきます。

特に機械式駐車場は築20年を超えると機械をすべて入れ替える必要性があり、1区画100万円~とかなりの負担が予想されます。

このように修繕積立金の不足原因はさまざまで、このような事態が発生した際には住民から一時金を徴収したり銀行から融資を受けたり、更には大規模修繕を延期せざるおえなくなる場合もあるでしょう。

しかし、住民の負担が増えること加え、融資を返済しなければならないなどの問題も考えなくてはなりません。

そんな時に利用しておきたいのが国や自治体から支援が受けられる助成金・補助金制度なのです。

修繕積立金不足における対処法についてはこちらをご参考ください

マンション大規模修繕で受けられる助成金・補助金制度

予算不足に陥ったマンションでも大丈夫!マンションの大規模修繕で利用できる主な助成金・補助金制度を紹介します。

マンション修繕、改良工事の助成金

これはマンションの維持管理を目的とした助成金制度です。
外壁塗装やバリアフリー化など、マンションの修繕・改良に対し助成してくれます。

また、マンションにエレベーターを設置する場合にも、既存ストック再生型の補助金を受給できます。

マンション耐震補強、耐震診断のための助成金

地震に強い都市を作るため、国が助成してくれる制度です。
これは、昭和56年以前のマンションにおける耐震基準法から耐震強度を上げることを目的として作られた制度です。

緊急輸送道路等沿道建築物の耐震化の助成金

地震などの災害時に避難や緊急活動、さらに物資の輸送経路を確保する改修工事のための助成金です。

アスベストの調査費用、除去工事による助成金

アスベストの調査費用と除去工事にかかる費用を一部助成してくれる制度です。

遮熱塗料や断熱塗料を使った塗装工事の補助金

マンション大規模修繕で遮熱塗料や断熱塗料を使い省エネ対策を実施した管理組合に対する補助金制度です。
これは各家庭の電気代節約に直結する工事でもありますので、マンション自体の売りになりますし、資産価値も上げることができます。

その他、全国各自治体が推奨するマンション大規模修繕に関する助成制度一覧は下記をご参考ください。
マンションの大規模修繕等に対する地方公共団体の助成制度(令和3年度調査)

マンションコンサルタント、アドバイザーの派遣制度もある

助成金や補助金ではありませんが、マンションコンサルタント、アドバイザーを派遣してくれる補助制度もあります。

これは、マンション管理士や建築士などの専門アドバイザーを自治体が派遣し、修繕積立金設定の見直しや準備、どのように修繕工事を進めていくかなどマンション管理に関するさまざまなアドバイスをしてくれる補助制度です。

マンションの大規模修繕工事では、事前にコンサルタントに依頼して劣化箇所や修繕時期などを見てもらうのが一般的ですが、自治体によっては専門家によるアドバイザーを派遣してくれる補助制度があるため、費用面も抑えることができるでしょう。

東京都防災・建築まちづくりセンターでは管理状況届出制度の届出を提出した管理組合限定でこの制度を利用できたり、武蔵野市では最大10回までのアドバイザー派遣料が無料だったりと、各自治体によって条件は異なるため事前に確認しておきましょう。

そもそもマンション大規模修繕の「助成金」と「補助金」の違いって何?

マンション大規模修繕における積立金不足問題を救う「助成金」や「補助金」。

どちらも国や自治体が実施する制度ですが、誰でも貰えるわけではなく審査や申請が必要になるなど、それぞれ以下のような違いがあります。

助成金|要件を満たせば受給可能◎

助成金は、決められた要件を満たすことで受給できるお金のことで、基本的に後払い制、返済義務はありません。

また、要件を満たしていれば複数の助成金を受給できるのもポイントです。

補助金|応募後、審査に通過すれば受給可能◎

補助金は、予め金額や採択件数が決まっているものが多いため、誰でも申請すれば貰えるお金ではありません。
そのため国や自治体が募集する補助金に応募し、審査が通過すれば受給することができます。

そしてこちらも助成金と同様に、後払い制で返済の義務はありません。

審査に通過するには、その事業内容はもちろん、社会的必要性や妥当性などを提出書類でアピールする必要があります。

このように、助成金は要件を満たしていれば支給されるお金ですが、補助金は採択件数に決まりがあるため、応募しても審査に通過しなければ支給されないという違いがあります。

「助成金」や「補助金」を受ける際には、事前にしっかりと募集要項を確認しましょう。