大規模修繕工事を行うにあたって必要な修繕積立金がどのようなものかご存じでしょうか。
一言に修繕積立金と言ってもその積立方法には種類があり、建物によって費用の相場も大きく異なります。
そこで今回は修繕積立金の方法についてや、費用の相場について解説していきます。
目次
大規模修繕工事に使われる修繕積立金ってどんなもの?
修繕積立金とは、建物の外壁や屋根、エントランス、エレベーターなどの住人皆が日常的に利用する共用部を中心とした修繕工事や維持管理に用いられる積立金で、住人全員が負担する仕組みになっています。
この積立金は目先の工事だけではなく、10年20年30年先の建物の将来を見据えて積み立てられるお金で、毎月少しずつ住人から集めておく必要があります。
なお、この積み立てられた修繕積立金は原則、建物が売却された場合でも返金されないので覚えておきましょう。
修繕積立金には2つの積み立て方式がある
大規模修繕工事に使われる修繕積立金には大きく2つの積立方法があり、いずれかの方法で住人から徴収を行います。
修繕積立金の積立方法 ① 均等積立方式
均等積立方法とは、一般的な大規模修繕工事の周期とされる12年の期間中に均等に積み立てる方法を指します。
その期間中に住人から定額で積立金を徴収する形になる為、安定して修繕積立金を積み立てられるメリットの他に、定額での徴収になる為、住人の未払いや滞納のリスクを抑えることもできます。
修繕積立金の積立方法 ② 段階増額積立方式
段階増額積立方式とは、2年、5年、10年などの一定期間ごとに段階的に積立金を増額していく方式を指します。
入居段階の積立金は比較的安く設定されているため、最初は住人の負担が少ないというメリットはありますが、長期的に見ると負担額が大きくなるというデメリットもあります。
また、段階的に積立金を上げるのに伴う住人との合意形成が難しい為、大規模修繕工事を行う際に予算不足になってしまったり、住人の長期的な居住が難しくなったりする可能性もあります。
段階増額積立方式が理想的ではありますが、住人の負担が大きかったり、住人との合意形成が難しかったりするという問題がある為、現在は均等積立方式を採用している建物が多いです。
大規模修繕工事の修繕積立金と管理費は何が違う?
よく大規模修繕工事に使われる修繕積立金と管理費を同じものとして認識している人がいますが、この二つは異なるお金です。
修繕積立金は冒頭でも解説した通り修繕工事の費用をまかなう費用である一方、管理費は日常的な設備の維持や管理にかかる費用を指します。
この管理費は共用部の清掃や水道光熱費、突発的な損傷に対する補修費、エレベーター等の定期点検などに用いられます。
その為、基本的な分譲マンションなどでは修繕積立金に加えて別に管理費が発生することを覚えておきましょう。
大規模修繕工事に用いられる修繕積立金と管理費の相場はどれくらい?
国土交通省の平成30年度マンション総合調査結果によると、大規模修繕工事に使われる修繕積立金と管理費の相場は以下のようになっています。
平均 :15,956円
単棟型:16,213円
団地型:14,660円
管理費(駐車場使用料等を除く)の1戸あたりの平均額
平均 :10,862円
単棟型:10,970円
団地型:10,419円
修繕積立金(駐車場使用料等を含む)の1戸あたりの平均額
平均 :12,268円
単棟型:11,875円
団地型:14,094円
修繕積立金(駐車場使用料等を除く)の1戸あたりの平均額
平均 :11,243円
単棟型:11,060円
団地型:12,152円
上記はあくまで相場となっており、建物の大きさや設備、さらには築年数によって多少の差が出てき、その年度によっても違いが出てきます。
大規模修繕工事に必要な修繕積立金が足りない場合はどうすればよい?
定期的に住人から修繕積立金を徴収していてもいざ大規模修繕工事を検討するタイミングになった際に「修繕積立金が不足している!」なんてこともあります。
この場合以下の方法を検討して修繕積立金を補いましょう。
① 住民から一時金を徴収する
これは修繕積立金の不足分を建物の戸数で割り、その金額を一時金として住人から徴収する方法です。
この方法は金利がかからずに早く不足分を補うことができるのがメリットですが、住人の負担が大きくなるため、反対意見が必ずと言っていいほど出るほか、高額になればなるほど総会決議が難航するというデメリットがあります。
② 不足分を金融機関から借り入れる
金融機関からの借り入れは一時金と比べて議決が比較的通りやすいのがメリットですが、金利が必要となる為、返済の際に実際に借り入れた修繕積立金の金額より増額するというデメリットがあります。
ですが住民から追加で徴収する必要がないため、トラブル防止につながるというメリットもあります。
③ 大規模修繕工事を延期する
上記の方法で了承を得られなかった場合は最悪大規模修繕工事の延期が必要になります。
ですが延期にすることによって劣化の悪化が進んでしまう他、劣化が進んだことによって次回行う大規模修繕工事の費用が増加してしまうことがある為、慎重に決める必要があります。
計画的に修繕積立金を集めて大規模修繕工事を問題なく進めよう
修繕積立金は日ごろからの計画的な徴収が必要不可欠で、住人との信頼関係の構築のためにも急な徴収や増額は抑えたいところです。
未来の大規模修繕工事の実施に向けて今から計画的な積立を行い、問題のない工事の実施に努めましょう。