大規模修繕のタイル補修工事の工程とは?費用相場や注意点についても解説

マンションの外壁に使われることの多いタイルは、時間の経過に伴い汚染や浮き、ひび割れなど劣化が進行していきます。

大規模修繕工事の際、「見た目は問題無いし、タイル補修はしなくて大丈夫だろう」と自己判断で決定してしまうと、タイルの剥離や落下の危険性があるなど、思わぬ大惨事を引き起こし兼ねません。

実際に通行中の車の窓を突き破って怪我人を出した事例もあるなど、外壁タイルの剥落事故は維持管理において大きな問題となっており、タイル補修工事を定期的に行うことは必須項目であるといえます。

今回は大規模修繕の「タイル補修工事」について、その必要性や工程、費用相場、注意点まで解説いたします。

大規模修繕でタイル補修を行う必要性とは?

大規模修繕の際にタイル補修を行う必要性は、主に「安全性の確保」「美観の維持」の2つがあります。

建物の安全性の確保する

建物自体の安全、そして周辺の安全性を確保するために外壁タイルの補修工事は必要です。

外壁タイルの劣化を放置していると剥がれやすくなります。剥離し、落下したタイルが歩行者に直撃するなど、取り返しのつかない事態に発展する可能性があるため自己判断するのではなく、業者にしっかり見てもらいましょう。

またひび割れたタイルの放置は、建物内部に雨水が侵入しやすくなり危険です。
建物の耐久性を維持していくためにも、タイル補修は大規模修繕の際に修繕しておく必要があるのです。

建物の美観を維持する

経年劣化したタイルは、剥離やひび割れが引き起こりますが、割れ落ちたタイルをそのままにしておくと建物の美観を損ねてしまいます。

マンションやビルにとって“清潔感のある美しい外観”というのは、入居者率の向上、資産価値の維持に繋がるものですので、破損箇所を修繕せずにいると入居率が下がり、家賃収入も減ってしまうでしょう。

大規模修繕における「タイル補修工事」の4つの工程

大規模修繕工事における「タイル補修」の工程は以下の4つの順番で行います。

  1. 打診チェック
  2. 下地補修
  3. タイル補修
  4. 目地補修

それでは、1つめの工程から順に説明していきます。

打診チェック

打診チェックは、剥離を調査する専用の棒「打診棒(パルハンマー)」で外壁タイルを叩いて状態を確認する作業です。

叩いた時に軽い高音が聞こえるタイルは、補修工事が必要になります。

タイルの補修工事には、正確な浮き箇所を見極めることができる打診チェックが欠かせません。

下地補修

広い範囲でタイルの浮きが見られたり、ひび割れていたりする場合は、破損箇所を一度剥がして新しいタイルを張り直します。

タイルは一度剥がすと接着強度が弱まるため、モルタルを刷り込んで下地を整えていきます。

タイル補修

タイル補修には、接着剤を注入する「アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法」と新しいタイルに張り替える「張り替え工法」との2種類があります。

軽微な劣化にはアンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法を用いて補修を行います。

張り替え工法では、既存のタイルと同様のものを用意する必要があるため、タイルの用意に時間がかかる可能性があります。また既存のタイルが廃番となっている場合には、特注で製造してもらうことが多いですが、その場合4ヶ月ほどの期間がかかります。
そのため、補修が決まったら早めに施工会社へタイルの発注を依頼しておきましょう。

「アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法」と「張り替え工法」の詳しい工程については次の項目で解説していきます。

目地補修

接着剤の注入やタイル張り替え作業が終了したらモルタルやシーリングといった充填剤で埋めていく、目地補修を行います。

「目地」はタイル同士の間にある継ぎ目部分をいい、建物やタイルのクッション材としての効果に加え、建物への浸水を防ぐ役割を持っています。
目地にもひび割れや収縮といった経年劣化が起こるものなので、適切な補修が必要です。

シーリング材についてはこちらの記事で詳しく解説しています!

大規模修繕でタイル補修が必要な2つの劣化パターンと補修費用

タイル補修工事が必要な2つの劣化パターンと補修工法、費用相場についてご紹介します。

劣化パターン1.タイルの浮き(下地浮き)

外壁タイルの初期段階である劣化パターンが「浮き」です。

タイルの浮きは表面には現れないため、見た目では気付きにくいものですが、実際にはタイルと下地の接着剤が少しずつ剥がれ、密着率が低下している状態になっています。

タイル補修をせずに浮いたタイルを放置していると剥がれやすくなり、最終的には建物から落下する恐れがあります。

→タイルの浮きの補修工法と費用|アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法

タイルの浮きに対する補修工法は、アンカーピンを用いた『アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法』を採用することが多いです。

アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法は、浮きがみられるタイル目地に穴を空け、モルタル接着注入用エポキシ樹脂を注入し孔内にアンカーピンを挿入することで接着させます。最後に目地詰めを行いタイル全体を固定して終了です。

浮きの補修工法の費用:1箇所あたり/約500~1,000円

【アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法の作業工程】
Step① 打診:浮きが見られる部分のモルタル施工箇所を打検ハンマーで調査する。
Step② マーキング:モルタルの浮き箇所をマーキングし、場所や面積を図面に明示する。
Step③ 穿孔(穴を開けること):浮き箇所を5mmの電動ドリルでコンクリートに達するまで注入孔を開ける。
Step④ エポキシ樹脂の注入:モルタル接着注入用エポキシ樹脂を注入し、コンクリートとの接着処理を行う。
Step⑤ アンカーピン挿入:アンカーピンを丁寧に挿入しキャップをする。
Step⑥ 目地詰め:同色のタイル目地セメントを目地に詰めて終了。

劣化パターン2.タイルのひび割れ、剥がれ、欠損

タイルの劣化パターン2つ目は表面に表れやすい「ひび割れ、剥がれ、欠損」です。

タイルのひび割れや剥がれ、欠損は、自然災害や雨水によって落下する危険性があるだけでなく、耐久性を損なったり、建物の見た目にも大きく影響する劣化症状です。

大規模修繕を行うタイミングでなくとも、マンションの外壁にひび割れや剥がれなどの劣化が見られたら、随時補修工事を行うことをおすすめします。

→タイルのひび割れ、剥がれ、欠損の補修工法と費用|張り替え工法

タイルのヒビ割れ、剥がれ、欠損には「張り替え工法」が用いられます。
張り替え工法はタイルの剥がれや劣化部分の貼付けモルタルを撤去し、新たなタイルを貼り付ける工法です。

張り替え工法の費用:タイル1枚あたり/約500円

【張り替え工法の作業工程】
Step① 打診:ひび割れが見られる部分のモルタル施工箇所を打検ハンマーで調査する。
Step② マーキング:モルタルの浮き箇所をマーキングし、場所や面積を図面に明示する。
Step③ カット:電動カッターで張り替え部分を切断する。
Step④ タイルの除去:張り替え箇所のタイルを剥がす。
Step⑤ タイル張り:タイル除去した部分の上から新たにモルタルを張る。
Step⑥ 目地詰め:同色のタイル目地セメントを目地に詰めて終了。

タイル補修工事の注意点|見積書よりさらに追加請求される可能性もある!?

タイル補修工事は、実際に足場を組んで打診チェックしてみないと劣化状況や修繕範囲が分からないため、工事着工後、実際に補修したタイルの枚数や範囲で費用を確定する「実数精算方式」と呼ばれる計算方法を採用しています。

そのため見積もり段階ではおおよその費用で計算されることが多く、最終的な費用は見積もり段階よりも増減する可能性があるのです。

このように、大規模修繕の際にタイル補修を依頼したら追加請求される可能性もあるということを十分に理解しておきましょう。

外壁タイルは大規模修繕の際にまとめて補修し「安全性」と「美観」を維持しよう

今回はタイル補修工事を行う必要性やその工程、費用、注意点について解説いたしました。

大規模修繕で行うタイル補修工事は、建物の機能性や耐久性、美観の維持に欠かせない修繕工事です。

外壁タイルの劣化が進行すると浮きや剥がれなどが起こり、剥落事故の発生や建物の資産価値の低下に繋がるため、適切なタイミングで施工業者へ調査を依頼し、劣化を見逃さないようにしましょう。