大規模修繕工事の必要性とは?その周期と事前準備、発生しやすい3つの住人・近隣トラブルについて解説

マンションは、建築工事完了時点から「劣化」が始まります。
暑い太陽の日射し(紫外線)、雨風、大気汚染など、年月が経つにつれ経年劣化していくのです。

この経年劣化を放置してしまうと、ひび割れ(クラック)や塗膜の剥がれなどが引き起こり、安全性や快適性が損なわれてしまいます。

それだけでなくマンション自体の資産価値も下がってしまうため、定期的にメンテナンスしていくことが大切でその為に必要となるのが「大規模修繕工事」というわけです。

本記事では、大規模修繕工事の必要性と周期、発生しやすい3つの住人・近隣トラブルについてご紹介いたします。

大規模修繕工事の必要性とは?どれくらいの周期で行うのか

「大規模修繕工事」はなぜ行わなければならないのか、その必要性についてお伝えします。

大規模修繕工事の定義

大規模修繕工事とは、マンションの経年劣化にあわせて実施される、修理や修復を行うための修繕工事のことです。
これは、マンションの管理組合が主体となり行うもので、老朽化による劣化や重大な不具合の発生を防止すべく長期修繕計画に基づいて計画修繕を行います。

大規模修繕工事を行う必要性

マンションは太陽の日射し(紫外線)や雨風に日々さらされ続けており、目に見えていなくても「老朽化」が進行しています。
老朽化の進行は、建物や設備を劣化させるだけでなく快適な居住空間の維持ができないことに加え、マンション自体の資産価値も落ちていきます。
そうした経年劣化に対し定期的な「大規模修繕工事」を実施することで劣化の速度を抑えることができるのです。
つまり、定期的な大規模修繕工事は建物の寿命に大きく影響する大切な工事なのです。

こちらの記事では「大規模修繕工事を行うメリット」について詳しく書いてます!

大規模修繕工事を行う周期は「12年に1度」が目安

マンションの劣化度合いは建物の立地条件や構造、管理状態などによって様々ですが、国土交通省ではこの大規模修繕工事を行う周期は「12年に1度」という目安を推奨しています。

そのため、劣化している部分や傷みの状況を把握し、修繕の時期を見極める必要があります。

―――必ずしも大規模修繕工事を12年毎に行う必要はない??

上述したように、国土交通省では大規模修繕工事を「12年周期」として推奨していますが、それはあくまでも“目安”となりますので、必ずしも12年毎に大規模修繕工事を行わなければならないと法律で定められているわけではありません。

つまり、設備の不具合等もなく外壁もほとんど汚れていない、といった場合には数千万~数億円の費用を支払い必ず12年毎に行う必要性はないといえます。

大規模修繕工事は建物の劣化にあわせて行うものですので、建築業界全体の技術力が向上している今、15年16年と修繕工事を引き伸ばす管理組合も存在しています。

大規模修繕工事を行うための事前準備

大規模修繕工事の実施には、計画的な準備が必要不可欠です。

まずはひび割れ(クラック)や塗膜の剥がれなど、劣化具合を業者に調査してもらい、どこをどの程度修繕するのか調べてもらいます。
しっかりと業者に診断してもらうことで、適切な大規模修繕工事の工程や大まかな費用なども知ることができるのです。

また、大規模修繕工事には約数千万~数億円単位の費用が発生します。
マンションの住人に請求する家賃は工事費用までしっかりと考慮した上で設定し、きちんと積み立てておくなど、計画的に準備を進め費用の確保をしておく必要があります。

そして劣化具合や積み立てた予算を考慮し、いくつかの施工業者に相見積もりを行い、信頼性と費用面の観点から大規模修繕工事を依頼する業者を選定しましょう。

施工業者を選定したあとも、業者に修繕工事を一貫して任せるのではなく工事が完了するまでは綿密なコミュニケーションを心がけ、主体性を持って関わっていくことが大切です。

大規模修繕工事で起こりやすい3つのトラブルとその対策方法

マンションの大規模修繕工事では、事前準備を綿密に行っていても住人や近隣との間にトラブルが発生しやすく、すべてのトラブルを完全に回避するのは難しいものです。

ここでは大規模修繕工事で起こりやすい3つのトラブルとその対策方法をご紹介していきます。

騒音・振動・異臭・ホコリ問題

大規模修繕工事ですので、騒音や振動、異臭、ホコリ等まったく出さないことは不可能です。
施工業者側からすればそんな当たり前の事でも、住人からしてみれば快適な生活環境が乱されるような問題ですから、しっかり配慮しておく必要があるのです。

また近隣住人に対しても同じように配慮しておかなければなりません。

修繕工事による騒音等の被害が発生することを考慮し、各戸、近隣にお知らせチラシをポスティングしたり、エントランス、エレベーターなどに工程表を張り出すなどして、工事について十分すぎるくらい住人・近隣の方々に周知し、理解を得られるよう心がけておくことがとても重要です。

プライバシー問題(窃盗被害が発生する可能性もある)

大規模修繕工事の多くは外壁の修繕工事です。作業員はバルコニー側に立てた足場のうえで工事を行うため、どうしても室内の中が見える状況になってしまいます。

作業員側は基本的に室内に視線をおくらないよう教育されているものですが、室内に人影が現れると思わず視線を向けてしまうこともあります。
作業員のそういった行動に対し、住人から“部屋の中を覗かれた”という苦情が届くわけです。

また、工事のために設置した足場を窃盗犯が利用しベランダへ侵入、窃盗事件が起こることも考えられます。

こうしたプライバシー問題、窃盗被害を回避するためにも「修繕工事期間中はカーテンを閉めてもらう」「施錠をする」など、プライバシーやセキュリティ対策を各戸徹底してもらうよう事前の呼びかけが必要となります。

施工不能問題

外壁工事の際、バルコニーに住人の私物が置いてあったり床にタイルが張ってあるなどすると施工不能となる可能性があるのです。

そんなトラブルを回避するためにも事前にどんな修繕工事を行うのか住人に説明し、バルコニーにある私物は撤去してもらうなど管理組合からの事前告知が必要となります。

修繕工事で起こり得るトラブルや対処法についてはこちらのコラムでも紹介してるよ

大規模修繕工事は住人の安全な暮らし、資産価値を守るためにも計画的に行いましょう

マンションというのは日々経年劣化していくものです。
「大規模修繕工事」は建物や設備の老朽化による事故や不具合の発生を防ぐため、そして住人の日々の暮らしとマンションの資産価値を守るためにも必要不可欠な工事といえます。

またトラブルをできるだけ回避できるよう住人や近隣の方々への配慮を忘れず、安全に実施するために専門家のアドバイスを受けるなど事前準備をしておくことをおすすめします。