マンションは経年劣化意外にも、台風や大地震といった自然災害などの予期せぬ災害によって損傷するケースがあり、耐久性や安全性を保つためには定期的な補修工事が欠かせません。
そこで、経年劣化や災害時に負った損傷を修繕するために国土交通省が推奨する「12年周期」を目安として大規模修繕工事が行われています。
建物の外観や防水工事など、共有部分に発生する劣化を修繕するこの大規模修繕工事ですが、ライフラインに欠かせない水を排水する配管部分も月日の経過に伴い劣化しており、劣化症状に応じて更新(交換)、もしくは補修しなければなりません。
今回は大規模修繕工事で配管修繕を行う必要性とタイミング、修繕工法、費用の目安までご紹介します。
目次
大規模修繕工事で配管修繕を行う必要性とタイミング
マンションのいたる所に張り巡らされた配管ですが、この配管もマンションの経年劣化に伴い日々劣化しています。
配管が劣化したままで放置していると水漏れやガス漏れなどが発生し、マンション全体に大きな被害をもたらす危険性があるため、大規模修繕の際には配管修繕を検討する必要があるのです。
またガス管が劣化することでガス漏れが発生するだけでなく、最悪の場合ガス爆発が起こるリスクもあるなど軽視できません。
普段私たちが当たり前のように使っている水道やガスですが、配管の劣化が進行すればそうした機能が停止するだけでなくマンション自体の寿命、そして安全性までもが失われてしまいます。
このような自体を防ぐためには、大規模修繕を行うタイミングで配管修繕も検討しておく必要があるのです。
ーーー配管修繕のベストなタイミングは2回目(24年)以降の大規模修繕工事!?
配管修繕の適切なタイミングは、一般的に12年周期で大規模修繕工事を行うマンションであれば、2回目(24年)以降の大規模修繕工事のタイミングで補修、交換するのが適切といえます。
それは、配管の種類や使用頻度によっても異なりますが、給水管や排水管などの配管の耐用年数が概ね“20年前後”であるためです。
配管修繕の対象となる主な2つの種類|給水管・排水管
大規模修繕工事の際に修繕対象となる主な配管は「給水管」「排水管」の2種類が挙げられます。
給水管
給水管は、炊事や洗濯など日々の生活に必要な水を供給するための設備です。
給水管の経年劣化が進行すれば水漏れの危険性があるだけでなく、赤水の発生にも繋がります。
ひと昔前では主流だった「亜鉛メッキ鋼管」では、水道水の塩素消毒や水温などの影響で亜鉛が溶け出し赤水が発生するため15年~20年が修繕目安でしたが、最近採用されている「硬質塩化ビニール管」や「ステンレス鋼管」では40年前後が一般的な修繕目安となっています。
ステンレス鋼管はマンションの給水管の中で最も高額ですが、その分耐用年数が長いことで採用するマンションが増えています。
亜鉛メッキ鋼管:15年~20年程度
硬質塩化ビニール管:20年~30年程度
硬質塩化ビライニング鋼管:管端防食継手なしで20年~30年、ありで30年~40年程度
ステンレス鋼管:30~40年程度
排水管
排水管は、キッチンや浴室、洗面所、トイレなどで使用した水を下水道へ流すための配管です。
その材質は給水管と変わりませんが料理に使った油や細かい生ゴミ、髪の毛なども流れることがあるため配管詰まりが発生しやすく、給水管よりも劣化の進行が早い傾向にあります。
そのため、配管修繕は給水管よりも定期的に点検し、劣化に応じて修繕していく必要があります。
以前は「亜鉛メッキ鋼管」や「鋳鉄管」などが主流でしたが、現在は下記2種類の配管を採用するマンションがほとんどです。
硬質塩化ビニール管:20年~30年程度(ただし配管場所によって異なる)
硬質塩化ビライニング鋼管:管端防食継手なしで20年~30年、ありで30年~40年程度
大規模修繕工事に伴う配管の修繕工法と費用目安
大規模修繕工事に伴う配管の修繕工法は、現状の給排水管をそのまま利用する『更生(ランニング)工法』と新しい配管に交換する『更新(交換)工法』という2つの工法で修繕していきます。
給排水管の劣化状況に応じて、適切な修繕工法を実施しましょう。
配管修繕工法① 更生(ランニング)工法
『更生(ランニング)工法』は、現状の配管に対して防錆処理を行うことで内部に発生したサビの腐食を抑制するもので、給排水管の寿命を15年~20年程度延長させることができます。
これは、サビが発生した給排水管の内部をクリーニングし、エポキシ樹脂を注入することで塗膜を形成させます。塗膜によって水との接触を断ち、腐食の進行を抑制させる修繕工事になります。
費用目安:一戸当たり10万円~
作業日数は:一戸当たり1日程度
配管修繕工法② 更新(交換)工法
『更新(交換)工法』は、現状の配管から新しい配管に交換する工法です。
新しい給排水管へ交換することで水に関するトラブルが解消し、キレイな水の供給に加え排水の詰まりも起きにくくなり寿命が20年程度保たれます。
ただし、配管の交換にあたっては壁や床を剥がして補修しなければならないことからその分費用も増します。
費用目安:一戸当たり50万円~
作業日数は:一戸当たり3日~5日程度
2回目以降に実施する大規模修繕工事では、給排水管の劣化診断を必ず行い「更生(ランニング)工法」か「更新(交換)工法」か、劣化症状に応じてしっかりと協議しましょう。
配管修繕は2回目以降の大規模修繕工事で計画的に実施しよう
私たちのライフラインである水をこの先も安全に利用していくためには、定期的な配管点検と修繕の実施が不可欠です。
配管修繕のベストなタイミングは、それぞれの劣化症状によって異なるものの配管の耐用年数が概ね20年前後であることから2回目(24年)以降の大規模修繕工事のタイミングで実施していくことがおすすめです。
また、更生と更新では費用も作業日数も異なるため、事前にしっかりと計画を立てておきましょう。