大規模修繕に必要な仮設工事とは?「直接仮設工事」「共通仮設工事」の違い、工事内容、設置期間についても解説

大規模修繕工事の着工前には必ず『仮設工事』を行います。

仮設工事というと足場設置のことを連想する方も多いと思いますが、足場の設置だけが仮設工事ではありません。仮設工事は「直接仮設工事」と「共通仮設工事」の2種類に分類され、その中で足場工事は直接仮設工事の一つになります。

今回は仮設工事について種類を説明していくと共に、大規模修繕の際にかかる費用と工事期間についても掘り下げて説明いたします。

仮設工事とは|その種類や大規模修繕でかかる設置費用について

仮設工事は主に「直接仮設工事」と「共通仮設工事」の2種類に分類され、工事期間中に必要となる施設や設備を一時的に設置する工事のことをいいます。

例えばマンションの大規模修繕工事では外壁塗装や防水工事を行うための足場の設置、飛散防止シート、作業員の仮設事務所、電気、水道、トイレなどを設置し、工事完了後には撤去作業を行います。この一連の流れが仮設工事となります。

<仮設工事の費用目安>

仮設工事の費用目安は総額の約20%”という計算で求めることが多いです。

例えば大規模修繕工事の総額費用が3,000万円だとした場合、仮設工事費用の目安は総額の約20%である600万円程度となります。

ちなみに超高層マンション(タワーマンション)や特殊な形状をしたマンションなどは足場も特殊になるため、仮設工事費用も相場より高くなります。

こうした足場の他にも、作業員が使用する電気料金や水道料金なども仮設工事費用に含まれているのです。

直接仮設工事とは?工事内容と仮設足場の6つの種類

仮設足場を主とする直接仮設工事は、作業員の安全確保や作業効率の向上、飛散の防止など施工時に必要不可欠となる工事です。

直接仮設工事の具体的な工事内容は以下の通りです。

  • 仮設足場
  • 脚立足場
  • ローリング足場
  • 昇降階段
  • 飛散防止養生シート
  • 転落防止用の巾木
  • 開口部養生
  • 墨出し
  • 水盛り・遣り方
  • 侵入防止柵
  • 資材運搬費
  • 各官庁申請費用(道路使用・占有等申請費)
  • 安全対策費(ガードマン)
  • 桟橋

直接仮設工事では必ず仮設足場を設置しますが、大規模修繕工事では主流となる「枠組足場」をはじめ、工事内容や工程に応じて足場の種類を使い分けているので、以下で6つの種類について詳しくご紹介します。

枠組足場

枠組足場は鉄製の部材で組み立てる足場で、大規模修繕では最も使用されるタイプの仮設足場です。

部材は軽量ながら強度が高いため、耐久性、安全性といった面で優れており、組立作業や解体作業をスムーズに行うことができるのが特徴です。

一方で部材自体は大きいため、複雑な形状をした建物や狭小地には適しません。
複雑な形状の建物への設置も可能ではあるものの、部材が多くコストが高くなりやすいです。

くさび式足場

部材同士を「くさび」と呼ばれる堅い金具で打ち付けて組み立てる足場です。

建物の高さや形状に関係なく自由に設置できるだけでなく、組立作業や解体作業も簡単にできることが特徴です。
ただし、打ち付け作業はパイプの上で行うため、くさび式足場の設置には十分な注意が必要です。

ゴンドラ足場

ゴンドラ足場は、建物の上からワイヤロープで吊り上げたゴンドラを昇降させるタイプの仮設足場です。

意外にも設置作業は簡単で、養生シートを必要としないため住人へのストレス軽減、さらに外部から足場を伝っての侵入リスクも軽減します。
作業員の往来もスムーズに行うことができ、工期を短くさせることができます。

しかしながら複雑な形状をした建物や強風、大雨など悪天候の際には作業を行う事ができないため注意が必要です。

吊り足場

吊り足場は他の足場とは仕組みが異なり、上から吊り下げるタイプの足場です。

プラント工事や橋梁工事など、地面に足場を設置できない場合に利用されています。

上から吊り材を吊り下げる難しい足場であるため「足場の組立て等作業主任者」を選任するなど、事故が起こらないよう慎重に作業する必要があります。

単管足場

単管足場は、単管(鉄パイプ)をつなぎ合わせて組み立てる仮設足場のことです。

組み立ての自由度が高く複雑な形状の建物に対応していること、密集地など狭い場所でも作業できること、さらにコスト面も安価であるメリットがあります。

一方で、鉄パイプ以外に単管ジョイントや固定型ベース金具、筋かいなどの部材も必要となるため組立作業や解体作業に時間がかかってしまうことや、作業はパイプの上で行うため安全性の面では危険な場合もあります。

移動昇降式足場(リフトクライマー)

移動昇降式足場は、地上から建物に沿って設置したレールに合わせて組む仮設足場です。

工事の進捗状況に合わせて足場を昇降させるため、養生シートは使わず住人へのストレス軽減、外部からの侵入リスクも軽減します。
さらに作業員の往来もスムーズに行うことができるなど、施工面においても大きなメリットを持っています。

しかしながら、強風、大雨など悪天候の際には作業を行う事ができないことで工期が遅れてしまう可能性もあります。

共通仮設工事とは?

共通仮設工事は、間接的に工事に関わる仮設トイレや注意事項を載せた掲示板といった仮設施設のことを指します。

例えば現場事務所の設置では電話やコピー機、インターネット回線など、工事をスムーズに進めていく上で極めて重要な工事となります。

共通仮設工事の工事内容は以下の通りです。

  • 現場事務所
  • 仮設トイレ
  • 資材用倉庫
  • 作業員詰所(作業員の休憩所)
  • 工事用電気
  • 工事用水道
  • 産業廃棄物の集積場
  • 各所養生

他にも、危険箇所に対する安全標識の設置や工事用掲示板の設置、マンションのエントランスには洗濯物に関連する工事情報を設置したりと、現場代理人の細かい気配りが必要となります。

大規模修繕の仮設工事設置期間と労働基準監督署へ提出する「足場の設置届」について

大規模修繕の際に行う仮設工事の設置期間は、マンションの規模や仮設足場の種類によって異なります。

小規模マンションでは10~15日程度の設置期間を要し、大規模マンションになるとその倍以上の期間が必要となります。

超高層マンションになると強風や落下の危険性もあるため、ゴンドラ足場などを用いて作業を行いますが、組立作業や解体時間が短いことからその分仮設工事期間は短縮されます。

仮設工事の解体作業は組み立てにかかった時間のおおよそ3分の一工期がかかります。

労働基準監督署へ提出する「足場の設置届」とは?

大規模修繕においては組み立てから解体までの期間が60日以上かつ足場の高さが10m以上の場合に限り、足場設置工事の開始日から30日前までに、労働基準監督署へ「足場の設置届」を提出することが義務付けられています。

届け出が受理されるまでの期間を含めると、大規模修繕の仮設工事の設置期間は1ヶ月を目安に考えておくと良いでしょう。

大規模修繕に必要な仮設工事について【まとめ】

仮設工事は、仮設足場を主とする「直接仮設工事」と現場事務所や仮設トイレなど間接的に工事に関わる「共通仮設工事」との2種類に分類されます。

またマンションの大規模修繕以外にも原則どんな工事にも行われるもので、迅速で安全な工事を行うためには欠かせない項目となります。

仮設足場にはマンションの形状や工事内容によって組み立てる足場が異なり、費用や工期もさまざまです。
他にも、自分のマンションにはどのような仮設工事が必要なのかなど、着手後に慌てることのないよう事前準備はを行い、施工業者との打ち合わせをしっかりと行いましょう。